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タグ「欠片」の検索結果
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12/03 (Thu) 01:16 *
「もう少しだけ、側に居てください」
不本意そうにそう言ったそいつの声は擦れていて、表情なんてもういっそ無様なほどに歪んでいたのだけど、
それでも、
恋に落ちるには十分だった。
[欠片] -
09/19 (Sat) 23:49 *
「古泉くんは家で何をしてるの?」と涼宮さんに何気なく振られた他愛もない話題に、「宿題をしたり本を読んだりですよ」とテンプレートのような答えを返すと、彼の目が少し眇められ、まるで「嘘をつけ」と言っているようだった。その視線に「嘘は言ってませんよ」と笑みだけで返して「あなたはどうなんですか」と彼に水を向けると、「どーせ寝てばっかなんでしょ!」と涼宮さんの楽しそうな声。そんなことはないだとかなんだとか、彼と彼女の応報に朝比奈さん長門さんまで巻き込んで、無邪気な会話は少し肌寒くなって色を無くした通学路に華やかに揺れる。そんな賑やかな帰路を経て、たどり着いた自宅の玄関、ひとつ落とした溜息はどこか甘く部屋の空気に溶けて、僕は思わず苦笑した。自分は現在の生活にそれなりに満足しているのだなあと他人事のように思いながら、ジャケットを脱いでハンガーにかけ、デスクの前に腰掛ける。パソコンの電源を入れながら、もう一方の手で付けたテレビには黄色い背景に黒文字で“愛は世界を救う”のスローガン。起動音に気づいてパソコンに向き直り、書きかけの報告書を開きながら小さく笑う。
誠に遺憾ながら、僕の愛は世界を救わない。
[欠片] -
09/05 (Sat) 00:23 *
この世界が愛おしいのだとその口から初めて聞いた。
状況にそぐわない柔らかく優しい声が、静かな境内にゆっくりと降り積もる。
夕日が辺りを薄く赤く染め上げて、世界はまるで恋に落ちるような色をしていた。
(溜息4:感想代わりの散文)
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08/31 (Mon) 00:51 *
少女漫画のようなその響きは、ずっと僕には無縁だと思っていた。それは諦めるまでもなく、元より選択肢に入っていなかったのから当然のことだ。当然であるが故に、今までそれを望んだことなど一度もない。例え彼と身体を繋げ、唇を合わせようとも。
——でも今日は、今日だけならば。
「“ふたりのために、せかいはあるの”」
呟いた言葉の甘さに、胸が焼けて涙が出た。
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08/25 (Tue) 21:05 *
【心に泳ぐ金魚は 恋しい想いを募らせて 真っ赤に染まり 実らぬ想いを知りながら それでもそばにいたいと願ったの】 眠れない夜を持て余してつけたラジオから女性の声がする。このご時世にテレビじゃないのはなんとなくそういう気分だったからで深い意味は無い。 ああでも、夏の夜中にラジオを聞くというその行為に幼い頃憧れていたのが少し作用したのかもしれない。ゆったりとした、おそらくラブソングと言われる類いの曲が、夏の生温い部屋に満ちていく。切々と歌われる想いには共感するところもあるけれど、これは女性だからこそ美しいのであって、男の僕が持っていても気持ちが悪いだけだ。だからといって女性ならこの現状が打破できたかと言えばそうでもないので、女性になりたいとは思わない。むしろ、積極的に遠慮したい。そんなことになったなら歯止めをひとつ失ってしまう。自分が案外もろいものだと自覚したのは最近で、繰り返す夏にひとつの甘い誘惑が首をもたげるのを、ひとり心の奥底で潰し続けている。潰し続けたそれは最早原型を留めてはおらず、どろどろの何かに成り果ててしまった。かつてはそれらも持っていたはずの、きらきらしい何かの面影は欠片も無い。—ああ、そういうことなのか、と唐突に腑に落ちてラジオを切る。それはそれで、賢い選択に違いない。 【心に泳ぐ金魚は 醜さで包まれぬよう この夏だけの命と決めて 少しの時間だけでも あなたの幸せを願ったの】
[欠片] -
08/19 (Wed) 01:20 *
「僕も大概歪んでいるでしょう?」と古泉は笑うけども、本当に歪んでいるのはそんな古泉をまるごと好きである俺の方だと思う。歪んでいるでしょう、と、口に出せる古泉は、俺なんぞより遥かに正直で真っ直ぐだ。
[欠片]
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